離婚したい理由は人それぞれですが、裁判にまでもつれた場合、法的に「認められる」離婚理由と「認められない」離婚理由があるのをご存知でしょうか?
このページでは、その離婚理由(原因)について簡単にご解説いたします。
法的に認められている5つの離婚理由
離婚には主として「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」があります。
前の二つは婚姻が破綻しているかいないかに関わらず、本人同士が話し合って合意し離婚するケースです。
そのため、この二つの離婚の場合には後述する民法が定める一の離婚理由がなくても本人同士が合意をすれば離婚することが可能です。
これに対し「裁判離婚」は、裁判所の決定ないし判決による離婚です。この場合には、一定の離婚理由原因がなければ裁判所は離婚を認めません。
裁判で認められる離婚理由は、民法にきちんと定められています。
- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
以上の5つが挙げられています。ここでは、民法が定める5つの離婚理由の概要とその離婚理由との関係で考えられる証拠を列挙します。
必要となる証拠は、個別具体的な事情により変わってきますので、ここに挙げている証拠だけで必要十分とは思わないように留意してください。
不貞
「不貞」とは、配偶者以外の異性と性的関係をもつことで、つまりは「浮気」「不倫」のことを言います。配偶者以外の異性との性的関係がゆきずりであっても、買春や売春であっても離婚理由になります。
不貞は、最初の定義で述べましたように「配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」ですので、配偶者以外の同性と性的関係を持ったり、配偶者以外の異性と相当親密な関係ではあるものの、性的関係を持っていない、あるいは、そのようなはっきりとした証拠が確保できない場合には、「不貞」には該当しません。
もっとも、このような場合は後述します「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものとして離婚理由になる可能性があります。
不貞があったかどうかを判断する上で、それが行われた時期も重要です。例えば、10年以上前に配偶者以外の異性と性的関係を持ったことが「不貞」に当てはまるかどうかは判断の分かれるところです。長年経過して今も結婚生活が続いているということは、相手がその行為を許したとも考えられるからです。
また、別居後に配偶者以外の異性と性的関係を持つことは不貞行為と認められない場合があります。別居状態であったということは、すでに結婚生活が破綻していたとも考えられるからです。
いずれの場合にも、裁判で離婚理由として認められるためには証拠が必要となります。
不貞を推測できる証拠の例
- 不倫(浮気)現場の写真や映像
- 相手が不倫(浮気)を認めた発言を録音したもの
- 性的関係があったことを認める手紙や日記
- ホテルに入ったことがわかるGPSの記録
- 調査会社などの第三者の証言
- 不倫浮気相手とのメール、LINE、通話などの履歴
- SNS(Twitter・Facebook・Instagramなど)の書き込み
- 交通機関のIC カードの履歴
- (不貞をしていることが分かる)携帯電話やパソコンに保存されている画像
- 不貞を疑わせるものの写真
- クレジットカードの利用明細書や領収書(明らかに本人のものではないとわかる買い物)
- ラブホテルの割引チケット etc.
悪意の遺棄
「悪意の遺棄」とは「自分勝手な都合で配偶者家族をほったらかしにすること」とでも言えば良いでしょうか。
夫婦はお互いに、同居義務、協力義務、扶助義務を果たさなければなりませんが、悪意の遺棄は正当な理由がないにも関わらず、これらの義務を果たさないことを言います。
「悪意」は「このままでは上手くやっていけないことが分かっているがそうなっても構わない」という不誠実さのことです。具体的には「生活費を妻に渡さない」「理由もなく同居拒否する」「健康なのに働こうとしない」などが挙げられます。
もっとも、正当な理由があれば悪意の遺棄とは見なされません。実際の裁判ではこうしたケースは、これから紹介する「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として判断されることが多いようです。
同居義務違反の例
- 一方的に出ていったことを示す手紙やメモ
- 別居していることがわかる住民票や賃貸借契約書
- 同居拒否を示した会話を録音したもの etc.
協力義務違反の例
- 源泉徴収票・給与明細書
- 預貯金通帳のコピー(多額の引き出し)
- クレジットカードや消費者金融の利用明細書
- 購入したもの(贅沢品など)の写真
- ギャンブル中や趣味活動中の写真や映像
- 家計簿 etc.
扶養義務違反の例
- 生活状況が分かる写真や映像、日記やメモ
- 親族や知人、第三者の証言 etc.
3年以上の生死不明
お互い協力し合い、助け合う夫婦のどちらかが3年以上、生死が分からない状態にあるということは、夫婦関係はすでに破綻したものと考えられます。
失踪や家出のほか、災害や事故にあって生死不明になった場合など、不明になった側に非がなくても離婚理由となります。
配偶者の生死不明が7年以上続いた場合は「失踪宣言の申立て」を行って婚姻関係を解消することもできます。配偶者は死亡したことになるので「死に別れ」ということになり、残された一方は再婚することも可能です。
ただし、失踪宣言後に生存が明らかになった場合、失踪宣言は取り消しになります。そのとき再婚していると重婚の状態になってしまいますので、配偶者の生死が不明の場合は、離婚訴訟を選択する方が良いでしょう。
相手の生死が3年以上分からないことを証明する証拠例
- 捜索願受理証明書
- 最後に受け取った手紙・はがき(消印がわかるもの)
- 最後の接触時の通話やLINEなどの履歴
- クレジットカード利用明細書 etc.
回復の見込みのない強度の精神病
「回復の見込みのない強度の精神病」とは、夫婦間での協力や助け合いの義務を十分に果たすことのできないほどの強度の精神障害をいい、仮に家庭に復帰した場合でも、夫・妻としての任に耐えられるかどうかが問われます。
それまでに一方の配偶者が献身的に介護回復の努力をしてきたか、患った側の今後の療養生活の目処が立っているかなど裁判では様々な要素を考慮して判断されます。
重篤な精神病を患っている証拠例
- 医師の診断書
- 入院・通院記録
- 献身的に介護してきた、病気の回復に尽力してきたことを証明する日記やメモ
- 親戚や知人、第三者の証言 etc.
その他婚姻を継続し難い重大な事由
離婚の理由として最も多く挙げられるのは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」です。何らかの理由で、夫婦が結婚生活を続ける意志をなくしており、一緒の生活に戻る見込みがないなど、夫婦関係が破綻している状態を指します。
具体的には「別居の有無やその期間」「暴行・虐待」「性格の不一致・価値観の相違」「宗教活動」「性的不能・性交拒否・性的異常」「配偶者の親族との不和」「不貞に関する行為」それに加えて離婚理由として認められる「回復の見込みのない強度の精神病」に該当しない「精神障害」「難病・重度の身体障害」などが挙げられます。
これらがひとつでは決定的な理由にならないとしても、いくつかの理由が重なることにより結婚の継続が難しいと裁判所が判断した場合は離婚が認められます。
DV(暴行・虐待)
ドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉でも知られる「暴行・虐待」は、身体的な暴力だけではなく、無視や暴言などの精神的な暴力(モラハラ)も含まれます。
裁判においても、DVが原因で離婚が認められることがありますが、その際には証拠が必要です。
暴力・虐待を受けている証拠例
- 医師の診断書
- 怪我の写真や動画
- 器物破損の写真や動画
- 暴言の録音
- 警察への相談記録
- 配偶者暴力相談支援センターなどに連絡を取る etc.
モラルハラスメント(モラハラ)とは、殴る・蹴るといった肉体的な暴力ではなく、発言や行動、態度などで相手を精神的に追い込む嫌がらせのことです。常に嫌なことを言われ続けたり、理由もなく無視され続けたり、趣味や相手の考えを尊重しなかったり、人前で笑いものにしたり、相手が病気のときに冷たく接したりなどの行為がなされることです。
性格の不一致・価値観の相違
「性格の不一致・価値観の相違」については、単に嗜好が合わない、言っていることが気に障る程度では、離婚の重大な事由として認められることはまずありません。このようなことは、どの夫婦にもあるからです。
ですから、性格の不一致に加えて、長期間別居しているなど、具体的に夫婦関係の回復の見込みがないと判断できる事実が必要となります。
夫婦関係が破綻していることを証明する証拠例
- 夫婦喧嘩の録音
- LINEやメールのやり取り
- 第三者への報告
- 親族や知人などの第三者の証言 etc.
宗教活動
「宗教活動」も離婚事由となり得ます。もちろん、信仰の自由はあるわけですが、行き過ぎた活動の影響によって、家庭生活が維持できなくなったり、子供の教育に教育に支障をきたすようなことがある場合は、婚姻を継続し難い自由と判断されることがあります。
宗教活動が婚姻関係に悪影響を与えている証拠例
- 宗教活動の実態を記録した日記やメモ
- 寄付金額や活動費の確認 etc.
性的不能・性交拒否・性的異常
夫婦関係の充足は、子供を作るためにも性生活は結婚の大切な要素のひとつですから「性的不能・性交拒否・性的異常」も婚姻を継続し難い事由に該当します。夫が妻とのセックスを拒否してアダルトビデオばかりを見ているようであればそれも当てはまります。
性的不能・異常、性行為拒否などの性交渉に関する事実を証明する証拠例
- 夫婦の会話の録音
- 日記やメモ
- メールやSNS(LINE)などのやり取り etc.
配偶者の親族との不和
「配偶者の親族との不和」については、例えば夫(妻)が妻(夫)と自分の親や親族が不和な状況であることを気にすることなく、親や親族に同調し、配偶者が辛い状況に置かれ、それを放置した場合などに離婚請求が認められることがあります。
不貞に関する行為
「不貞に関する行為」については「不貞」にあたる性的関係には至らないまでも、配偶者以外の者との関係が原因となって結婚生活が破綻した場合には、離婚請求が認められる場合があります。
例えば、配偶者以外の同性との性的関係をもったり、配偶者以外の異性と性的関係をもったかまでは分からないものの、相当親密な関係であったような場合が考えられます。
回復の見込みのない強度の精神病に該当しない精神障害
「回復の見込みのない強度の精神病に該当しない精神障害」については、神経症(ノイローゼ)、アルコール中毒、薬物中毒などがその対象となります。
「難病・重度の身体障害」とともに、やはりこれらを理由に結婚生活の回復の見込みがないことが条件となります。
精神病を患っている証拠例
- 医師の診断書
- 入院・通院記録
- 献身的に介護してきた、病気の回復に尽力してきたことを証明する日記やメモ
- 親戚や知人、第三者の証言 etc.
裁判で使える証拠なら第一探偵事務所
ここまでご説明しましたように、裁判での離婚をお考えでしたら「法的」な証拠が必要となりますので、ぜひ水面下での準備を進めてください。もし、ご自身で集めることが難しいものがありましたら、そのときは当探偵事務所にご相談ください。ご相談者様のお悩みを解決できるよう全力でサポートいたします。
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