財産分与は、当事者双方が納得すれば、特にルールに縛られることなく決めることができますが、もし、当事者双方が納得しない場合には、裁判所は財産分与の処理をどのようなルールに基づいて処理をするのか知っておくことは有益です。仮に、調停・審判・裁判になれば、そのルールに基づいて処理されるからです。
離婚をご検討されている方は、あらためて財産分与のルールを確認しておきましょう。
財産分与とは?
財産分与とは、離婚をした者の一方が他方に対して財産を分与することです。婚姻関係が長年続くと、夫婦共同で形成した財産が増えていきます。預貯金が増えるだけであれば離婚する際の財産分与はそれほど複雑になりませんが、不動産、保険、有価証券など様々な財産が形成されたり、その財産の形成に結婚前からあった財産が投入されていたりすると、財産分与は複雑になってきます。
夫婦の財産をどのように分ける?
財産分与に関して「法律」では、離婚した者の一方は、相手に対して財産の分与を請求することができると規定しています。
財産分与は、婚姻期間中の夫婦の財産を清算する意味合いである「清算的財産分与」、離婚後の生活に困窮するおそれのある配偶者を扶養する意味合いである「扶養的財産分与」、離婚に伴う慰謝料の意味を含める「慰謝料的財産分与」など大きく三つに性質を有します。
このように、財産分与は3つの性質を有しますが、全てまとめて財産分与として解決されることが多いです。
また、離婚成立前に支払われていない婚姻費用がある場合には、婚姻費用の清算を含めて財産分与が行われることもあります。
財産分与請求は、離婚ときから2年経ってしまうと時効にかかって主張できなくなりますので、請求する時期にはくれぐれも気をつけましょう。
① 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
② 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
③ 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
参考:民法768条
財産分与は、離婚のときから「2年」経つと時効に。請求時期に注意。
財産分与の対象とは?
夫婦どちらかの財産は、全てが財産分与の対象とはなりません。財産分与の対象となる財産かどうかについては、それが「共有財産」か「特有財産」かどうかを区別し、考えていく必要があります。
財産分与の対象となるのが共有財産、財産分与の対象とならないのが共有財産です。
財産分与の対象となる財産かどうかは、それがどちらの名義であるかは関係なく、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産であればよく、これを「共有財産」と呼びます。
結婚してから購入した家や、そこで揃えた家具や家財などが財産分与の対象となることはもちろん、一方の名義になっている不動産、預貯金や株式、自動車、保険金なども含まれます。一方が得る退職金も婚姻期間中は相手の協力があって働いて得た給与に対して付加されるお金なので、これも共有財産に当たります。
結婚生活によって協力して得た財産を共有財産と捉えると、別居後に得た財産についてはその対象となりません。別居後は夫婦が協力して財産を築いたとは言えないからです。
つまり、財産分与の対象となるのは、夫婦となってから別居するまでに夫婦で協力して形成された財産で、「独身時代」また「別居後」にそれぞれが蓄えた財産や相続で取得した財産は財産分与の対象にはならないということです。
特有財産は分与の対象外
「共有財産」に対し、どちらか一方の財産として認められるものを「特有財産」と呼びます。
特有財産には、どちらか一方が結婚前からあらかじめ持っていた財産と婚姻期間中でも「夫婦の協力」で得たとは見なされない財産があります。
たとえば、結婚前に既に貯めていたお金(預貯金)や購入済マンションなど、どちらか一方が結婚前にあらかじめもっていたものであれば特有財産と見なされます。また、婚姻期間中であっても、相続で取得した財産などは、夫婦が協力して取得した財産とはいえないので特有財産となります。
しかし、特有財産であっても、夫婦の協力によってその価値が上がったなどといえる場合は財産分与の対象となるケースもあり得ます。たとえば、夫が婚姻前から有していた不動産を、妻が管理・運営をしていたり、夫の事業を手伝うなどすることにより価値が上がった場合などは、それにより得た利益は共有財産といえることがあります。
借金は財産分与の対象?
借金などの負債がある場合は、プラス分の「資産」から、マイナス分の「負債」を引いた残額を「財産として分与することになります。プラス分の資産からマイナス分の負債を引いた残額がマイナスの場合は、財産分与すべき財産がないといえます。借金は、原則として借金をした側が返済をすることになります。
この場合、負債をどこまで「夫婦としての負債」と判断するかについても、共有財産、特有財産の考え方に当てはめます。婚姻生活のために生じた負債、たとえば結婚後にマンションを購入した住宅ローンや生活費のための借金は「共有の負債」となりますし、どちらか一方が婚姻生活とは関係なくできた負債、たとえばパチンコや競馬などにお金をつぎ込んで膨れ上がった借金であれば「特有の負債」となります。
つまり、婚姻生活を継続していくための借金であれば、財産分与の対象となり、ギャンブルなど婚姻生活には関係のない個人的な借金は財産分の対象とはなりません。
財産分与の割合とは?
財産は、夫婦で1/2(2分の1)ずつ分けるのが基本です。
話合いで財産分与の割合を決めることは自由です。しかし、財産分与の割合などが話合いでうまくまとまらない場合には、裁判所での調停や裁判を通して、財産分与についての取り決めを行うことになります。
そこでは、婚姻期間、財産の内容や状況、それに対しての貢献度、離婚後の生活の見通しなどを総合して判断します。
2人が財産を築き上げるにあたって、どれくらい貢献したのかが大きな判断材料となって、分与の程度が決まります。家事育児なども貢献として認められるため、夫が稼いできた給与を貯めた預貯金などについてもしっかり分与されます。
共働きであった場合ですが、夫の方が妻よりも多く収入を得ていたとしても、収入の差は考慮されず、基本的には5割ずつに分けられることが多いようです。ただ、労働時間や勤務年数などに大きな差がある場合は、それが考慮されることもあります。
専業主婦の場合は、以前は共働きに比べると家事が労働として低く見積もられがちでしたが、近年では5割と見なされるようになりつつあります。
夫が経営する会社の資産の場合、会社は夫と別人格とみなされるため、分与の対象になりません。ただし、夫が個人で営業している実態がある場合、分与の対象になることはあります。
分与の割合は「折半」が基本。
財産分与の方法と取り決め時期
財産をどのように分けるかについては、基本的には夫婦で話し合って自由に取り決めることができますが、話合いですっきりと解決することがなかなか難しいものです。それぞれの離婚後の家庭事情や、結婚生活中の貢献度などを考えて話し合うのですが、考え方の違いなどでぶつかることが多いからです。
財産のうち何割をもらうべきかをはっきり伝えたうえで、欲しいものの優先順位をつけて話し合っていくとまとまりやすいかもしれません。
- 財産の主な分け方とは?
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- 分割できない財産を自分が保持する代わりに相手に相当の金銭を支払う。
- 財産を売却してその売却代金を分ける。
- 自分の土地・建物は妻、株式は夫、などと現物ごとに分ける。
金銭の場合、一括払いが原則ではありますが、一方の支払い能力に応じて分割払いになるケースもあります。財産分与や支払い方法が決まった後は、その内容をまとめた文章を作成しておくことをおすすめします。
分割払いの場合は、将来支払いが滞ったときを想定して、公正証書を作成しておくのがよいでしょう。公正証書があれば、裁判所に対して給与の差押え等の強制執行の申立てを行えます。給与の差押えをすると相手の会社に対して差押通知が行き、給与の一部を会社から支払ってもらうことができます。
財産分与額の確定や請求はできるだけ離婚前に解決しておくことをおすすめします。なぜなら、いったん離婚が成立した後では、連絡がとれなくなって話合いに応じてくれない場合や財産が使われてしまう可能性があるからです。
財産分与についての話合いが離婚までにまとまらなかった場合や離婚時には分からなかった財産が後から発覚したときは、離婚をしてから2年以内であれば、調停や審判という手続きを利用して財産分与を請求することができます。
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